2025年4月26日に岡山駅近くの岡山国際交流センターにて、通算5回目となる JP_Stripes 岡山が開催されました。少人数ながらも、 Stripe を10年近く導入提案されてきた中での気づきのシェアや、全社的に収益改善に向けて取り組む枠組みの1つでもある RevOps ( Revenue Operations )を実践されている方のお話、小規模ビジネスにおける Stripe を活用した DX の可能性など、幅広い角度からビジネスそしてサービスの運用改善についてディスカッションすることができる、白熱したイベントだったと感じています。
当日は「AIで加速するRevOps、実装・分析から請求管理までをデモ付きで紹介します!」というセッションで、DigitalCube に転職してからの取り組みや、Stripe に入社する前に DigitalCube で取り組んでいたことについて紹介する登壇を行いました。この記事では、セッション内容や登壇についての振り返りという形で本イベントでの学びを紹介します。
オープニング: 話題の RevOps と Stripe の関係を整理する
オープニングセッションは、Stripe のエバンジェリストである小島さんから、RevOps(Revenue Operations)の概念と、Stripe の活用方法について詳しく解説していただきました。

鳥の目、虫の目、魚の目で見る収益管理
ヌーラボの CRO ( Cheif Revenue Officer )として RevOps の実践にも取り組まれている小島さん。 RevOps 部門の設立やその役割について、「鳥の目、虫の目、魚の目」で見ることが重要であると紹介がありました。これは、俯瞰的に物事を見る力、細部まで見る力、そして変化を捉える力の三つを指します。これらを活用することで、経営側は収益を継続的に向上させることができるといいます。
Stripe がビジネスにもたらす四つの価値
Stripe の価値として、小島さんは次の四つのポイントを挙げていました。コンバージョンを向上させる点では、ユーザーフレンドリーな決済体験によって成約率を改善できます。生産性を高める面では、決済関連の運用業務を効率化できるでしょう。さらに、価格設定を柔軟に変更できる点と、高機能なダッシュボードでデータ分析と意思決定を支援できる点も大きな魅力です。
特に、銀行振込やコンビニ決済などの多様な決済手段を統合して管理できる点が強調され、異なる決済方法のデータを一元化することで分析やレポート作成を効率化できることが示されていました。
セッション1: 10年間の Stripe 運用から見えた実践知
2つ目のセッションは、岡山で長年 Stripe の導入支援や JP_Stripes コミュニティの運営に複数のメンバーが携わってくださっている DIGITALJET 社の代表取締役 真崎さんからのセッションでした。このセッションでは、 DIGITALJET 社の約10年にわたる Stripe 運用経験からの学びや提案のポイントなどが紹介されました。印象的だったのは、 Stripe の導入メリットについてよく紹介されがちな「導入のしやすさ」や「入金サイクルの速さ」だけでなく、長期運用の視点から Stripe を入れるメリットについてお話があったことです。
成長段階に合わせた機能の活用法
10年以上前の初めて Stripe を導入された体験についてお話がありました。新しいサービスを立ち上げた際、当時 Stripe が簡単に決済フォームを埋め込む機能として提供していた Checkout.js を選択されました。これはカード情報が自社サービス側に一切残らない設計が可能だったためで、決済に関するリスクを最小化できることにメリットを感じたと振り返られていました。
サービスが成長するにつれ、チームの開発リソースが間に合わなくなったり、 Stripe アップデートに対応するコストをどう捻出するかという課題が発生しました。このタイミングで DIGITALJET 社では Stripe Checkout の導入を決定したとのことです。これにより、決済失敗時の対応や3Dセキュア対応などが自動化され、決済に関する開発や変更への対応コストを大幅に削減できたとのことです。
拡大期を支える柔軟な対応力
サービスが成長するにつれ、マーケットプレイスのような機能を追加する必要が発生したとのことですが、これは Stripe Connect(マーケットプレイス型のビジネスモデルをサポートする機能)を導入することで簡単に解決したということです。決済数の増加と Connect 導入により経理業務の負担が課題となった際には、Sigma(SQL を使って Stripe 上のデータを分析できるツール)を導入して解決されたとお話されていました。
長期運用がもたらす価値
セッションの最後に強調されたのは、Stripe を長期的に運用することへの価値でした。「10年近く使っていますが、決済エラーや同期問題が一度も起きていません」といったコメントもあり、安定性の高さや開発・検証環境の充実が充実していることも、実務上大きなメリットになるようです。
「Stripe は始めやすいだけでなく、サービスが大きくなっても色々なことが解決できる」というまとめは、長年 Stripe を利用・提案されているからこその言葉ではないかと感じました。
セッション2: AI を活用した Stripe 実装や業務の効率化
この日は2番目のユーザーセッションにて「AI で加速する RevOps 実装・分析から請求管理まで」というタイトルで登壇しました。セッションではまず、複数の Stripe アカウントを利用しているために発生するちょっとした手作業の手間や、通知周りの仕組みを活用しきれてなかったために発生した問題と、その対応方法などを紹介しました。

その後、2024 年 12 月ごろからリリースやアップデートが活発化している、 生成 AI との連携機能について紹介しました。 Stripe の Model Context Procotol ( MCP ) サーバーを導入して、支払いのためのリンクを AI に作らせるデモや、Stripe のドキュメントを検索して開発の計画やコーディングを AI におこなせるデモなどを行いました。
登壇時間をめいっぱい使ったため、デモ自体は Payment Links を使うシンプルなものに絞りました。しかし懇親会などで参加者とディスカッションしていると、「商品と料金を登録して、それから Payment Links を作ってください」という複数ステップにわたる作業手順をまとめられるだけでも、ニーズのある領域は少なくないのでは、というコメントをいただきました。
AI エージェントを利用した EC サイトなどの話題もありますが、小さな社内業務フローの効率化や自動化に活用するユースケースも今後は注目を集めるかもしれません。
セッション3: Google カレンダーと Stripe 連携の実際
この次のセッションでは、瀬戸内ことりさんから Google カレンダーと Stripe の連携に関するして調査やテストされた際の経験が紹介されました。
Google カレンダーには Stripe と連携して予約と決済をワンストップで行うことができる機能があります。手動もしくは複数のサービスを組み合わせて教室や面談の予約などを提供されることが小規模ビジネスでは多いそうで、ワンストップで予約と決済を実現できるソリューションが DX に効果的であることが紹介されました。また、予約等の仕組みを検討する中では、 Stripe の決済手数料の安さと決済手段の多様性も強みとして挙げられていました。
運用上の課題と現実的な対応策
ただし、Google ワークスペースのプラン改定により、以前よりも高額なプランへの移行が必要となった点が課題としてあがっているそうです。これにより、コスト対効果のバランスが崩れ、連携の推奨が難しくなっているようです。
そのため、まずは予約やスケジュール調整のワークフローを整備することにフォーカスし、 Google カレンダーなどの無料機能を使いこなすことが提案されました。その後手作業の時間コストと新しい Google ワークスペースの料金を比較して、決済まで自動化するかどうかを判断すると良いそうです。
セッション4: Stripe x Fivetran x dbtではじめる RevOps データ基盤
最後のセッションはフリーランスの RevOps エンジニアとして活躍されているにっしーさんによるデータ分析基盤の構築やそれによるデータ活用についてのお話でした。
企業が直面するデータ活用の壁
多くの企業ではデータの活用が十分にできていない現状があるようです。スプレッドシートが各部署に散在している問題や、マスターデータの所在が不明確な状況、そして Stripe 単体のデータ分析ではプロダクトの利用状況などを収集している自社データとの組み合わせ分析が困難といった課題が挙げられていました。
AI とデータ基盤が生み出す相乗効果
最近のトレンドとして AI とデータ基盤の相性の良さが注目されています。SQL の知識がなくても自然言語でデータ分析を依頼できるような傾向が出てきているとのことでした。しかし、AI も万能ではないため、データの質や意味の理解が不十分だと、分析データも意味のないものや不確実なものが出来上がってしまいます。このような「Garbage in, garbage out」を起こさないデータの整備が重要だということです。
実践的なデータ連携のアプローチ
発表では、Stripe や自社のデータベースからデータを抽出し、Fivetran などの ELT ツール(Extract, Load, Transform の略で、データの抽出・読み込み・変換を行うツール)を用いてデータウェアハウスに流し込み、DBT というツールでデータを加工して分析や BI ツールに流し込むプロセスが紹介されていました。
このような自社が持つ DB や SaaS のデータを抽出・読み込み・変換の 3 ステップで処理し、各チームや部署が必要とする分析データを取り出せるような基盤構築が重要とのことです。これによって、データに基づく素早いビジネス判断が可能になり、オープニングセッションで小島さんが紹介されたような RevOps をより実践しやすくなります。
まとめ:成長段階に応じた Stripe 活用のあり方
このイベントで印象的だったのは、Stripe は単なる決済ツールではなく、サービスの成長段階に応じた課題解決のパートナーになり得るということです。サービス立ち上げ期のリスク低減から成長期の効率化、そして拡大期の柔軟な対応まで、様々なニーズに応えられる点が各セッションで共通して強調されていたのが印象的です。
特に目を引いたのは、「始めやすさ」と「成長に合わせた拡張性」という二つの特長がバランス良く両立している点と言えるのではないでしょうか。これから Stripe を導入する企業だけでなく、すでに利用中の企業にとっても、各セッションで共有された知見は大きな示唆を与えてくれるものでした。
Stripe を活用したオンライン決済システム導入をサポートします
株式会社デジタルキューブは Stripe 公式パートナーとして、自社サービス開発で培った経験を活かし、Stripe を用いた決済システムの導入を支援します。多言語対応の決済フォーム実装、モバイル支払い対応、柔軟な従量課金システム構築など、ユースケースに合わせた活用方法の提案から、専用ダッシュボードの開発まで幅広くサポートします。
SaaS ダッシュボード開発や EC サイトへの Stripe 決済導入など、様々な導入実績があります。 API の呼び出しだけで決済機能を実装できる Stripe の利点を最大限に活かしたシステム構築をお手伝いします。