Stripeから「Stripe Billing に関する重要な更新のお知らせ」というメールが送られてきました。このアップデートは規制ガイドラインの改定に対応するためのもので、顧客が自らサブスクリプションを管理できる機能が強化されています。オンライン請求書ページ、カスタマーポータル、顧客へのメールを通じてこれらの機能が提供され、Stripe Billing に標準で含まれており追加料金は発生しません。
このアップデートが開発者であるあなたのシステムにどのような影響を与えるのか、そして何を調査・準備すべきかを解説します。
重要ポイント:何が変わるのか?
今回のアップデートでは主に2つの変更点があります。
- 1回きりの請求書における、支払い情報の保存方法
- サブスクリプションで Stripe が送信するメールのリンク先設定
これらの変更は、顧客体験の向上に貢献する一方で、開発者側で確認・対応すべき設定変更も発生します。特に5月30日以降に作成される新しい Stripe アカウントでは、デフォルト設定が変更されるため注意が必要です。
変更1: Stripe が発行するオンライン請求書で、支払い情報の保存が可能になりました
Stripe を利用している場合、サブスクリプションや 1 回きりの請求書を Stripe が自動的に顧客へ送信します。この時、顧客は Stripe が用意する決済フォームから支払いを行います。今回のアップデートでは、この決済フォームを利用して送信されたカード情報などを、次回以降の請求書でも利用できるように Stripe 上に保存できるようになります。
何が変わるのか
Stripe からメールで送信された請求書に含まれる支払いフォームにアクセスすると、「将来に備えて支払い情報を保存する」チェックボックスがカードフォーム上に表示されるようになります。顧客がこのチェックボックスをオンにして支払いを行った場合、決済に利用されたカード情報を次回以降の請求で再利用できるようになります。

支払い情報の保存自体は、サブスクリプションの決済ですでに利用できる機能です。今回この保存機能が、1回きりの支払いを請求するフローにおいて、ユーザーが保存するかしないかをオプトインできるようになりました。
確認・対応すべきこと
Stripe ダッシュボードの請求書設定ページで現在の設定を確認してみましょう。[ 設定 > Billing > 請求書 ] ページからこの設定を確認できます。

[ デフォルトの支払い条件 ] セクションまで画面をスクロールさせましょう。ここに Stripe が送信する請求書に記載する支払いページに関する設定があります。 今回のアップデートから、 [ 購入者の支払い情報を保存する ] チェックボックスが新しく追加されました。継続した取引があり、請求書を送付することが多いクライアントを持っている企業などは、このチェックボックスをオンにしましょう。これによって顧客がカード情報を保存し、次回以降の請求処理でカード情報の入力を省略できるようになります。

なお、支払い情報の保存を顧客の同意なしに行う設定もできるようにはなっています。ただし同意なくカード情報を保存することは、ビジネスを展開する国や地域の個人情報保護に関する法律・規制などに抵触するケースもありますので、画像にある注意書きの通り、おすすめはいたしません。

いつから影響があるのか
5月30日以降に作成される新しい Stripe アカウントでは、オンライン請求書ページを使用した1回限りの請求書の支払い時に、支払い方法を保存するオプションがデフォルトで顧客に表示されるようになります。一方、既存のアカウントについてはデフォルト設定に変更はありません。そのため、設定画面にアクセスしてご自身で調整していただく必要があります。
変更点2:サブスクリプション管理機能の強化
Stripe がサブスクリプションを契約している顧客に送信するメールには、トライアル終了前のリマインダーや契約の更新通知・カード有効期限切れの通知やカード支払いの失敗などがあります。これらのメールは、Stripe ダッシュボード上からオン/オフやプレビューの確認が行えます。

今回のアップデートから、これらのメールに設定できるリンク先を「 Stripe がホストするリンク」または「カスタムリンク」の2つから選べるようになります。

何が変わるのか
これまでのカスタムリンク設定は、「両方を組み合わせて使用(レガシー)」に移動しました。この設定を変更することができなくなります。そのため、メールごとにリンクを設定するのではなく、すべてのメールに対応できるリンクを設定するか、 Stripe がホストするページへのリンクに設定するかを選択する必要があります。

なお、レガシーの設定から変更しようとすると、保存時に確認画面が表示されます。この画面で [ 変更を確定する ] ボタンをクリックすると、レガシーの設定には戻れなくなりますのでご注意ください。

変更を確定させると、下の画像のようにレガシーの選択肢が非表示になります。メールごとに異なるリンクを設定されている方は、慎重に作業するようにしてください。

Stripe から送られるメールを確認する方法
設定ページでは、Stripe から送信されるメールの文面をプレビューやテスト送信することができます。内容を確認したいメールの右側にある目のアイコンをクリックしてみましょう。クリックするとプレビューが表示されます。

プレビューの画面を下にスクロールすると、 [ 自分にテストメールを送信する ] ボタンが出てきます。このボタンをクリックすると、現在ダッシュボードにログインしているユーザーのメールアドレス宛に、テストメールが送信されます。

あとはメールボックスでメールをチェックしましょう。カスタムリンクを設定している場合は、 [ 支払い方法を更新する ] ボタンをクリックして、実際にリンクにアクセスできるかもチェックすることをお勧めします。

stripe.com へ遷移することもあるので、完全にテストできるわけではないことに注意しましょう。
Connectで請求書やサブスクリプションを提供している場合
Stripe Connect を使われている場合、紹介した変更点が連結アカウントにも適用されることに注意しましょう。特に5月30日以降に作成される連結アカウントには、今回の変更(特に支払い方法の保存設定に関する新しいデフォルト設定)が自動的に適用されます。それ以前に作成された既存の連結アカウントについても、設定を見直す必要があるかもしれません。
Accounts API のドキュメントをチェックして、新規および既存の連結アカウントの設定変更方法を確認し、対応内容について検討してください。
まとめ
今回の Stripe Billing アップデートは、規制ガイドラインの改定に対応するための変更とのことです。これにより、顧客が自らサブスクリプションをより柔軟に管理できるようになるということがメールには記載されていました。特に支払い方法の保存設定のカスタマイズについては、継続的に Stripe から請求書を発行・送信されている企業にとって、影響範囲の調査が必要になるポイントです。 Connect を使ってサービスとして請求書発行機能を提供されている場合にも注意が必要かもしれません。 SaaS 企業では、Stripe から送信させているメールに設定するリンクの仕様が変化しています。そのため、現在の設定と新しい仕様に不整合が起きていないかは、社内で確認するようにしましょう。
また開発者や制作会社の視点では、2025 年 5 月 30 日を境に新しい Stripe アカウントや連結アカウントのデフォルト設定が変わっていることに注意が必要です。社内で手順書やマニュアル・スクリプトなどを用意している場合は、影響を受けていないかをチェックしましょう。
既存のシステムへの影響を最小限に抑えつつ、顧客体験を向上させるために、本記事で紹介した調査項目と対応方針を参考に、早めの対応を検討しましょう。なお、これらの機能は Stripe Billing に標準で含まれており、追加料金は発生しません。
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