デジタルキューブ、事業戦略室の岡本秀高です。
2025年6月3日、サイボウズ東京オフィスにて開催された「Cloudflare Workers Tech Talks in Tokyo #5」に登壇させていただきました。雨天にもかかわらず126名の登録者のうち約90名が参加する盛況なイベントで、当日はMCPサーバーのマネタイズをテーマに発表を行いました。
イベント概要
Cloudflare Workers Tech Talks は、Cloudflare Workers とその周辺プロダクトを使う開発者やライブラリ作者による、開発者のための Workers に特化したテックトークイベントです。このイベントの特徴は「スピーカーが自由に話す」ということです。「Cloudflare Workers とは何か?」というようなイントロダクションはしないで、話したいことを話します。

東京開催は今回で5回目となり、Cloudflare の DevRel チームから Ricky Robinett 氏と Michael Hart 氏も参加する国際色豊かな内容となりました。
登壇セッション: Stripe と Cloudflare で、MCP サーバーのマネタイズに挑戦
今回は「Stripe と Cloudflare で、MCP サーバーのマネタイズに挑戦する」というテーマで登壇しました。
セッションでは、実務で MCP サーバーの開発や普及活動をする中で感じた、 MCP サーバーのビジネス活用をいくつか紹介しました。
- 社内の DX 提案としての MCP サーバー開発
- SaaS の新しい UI として MCP サーバーを提供
- MCP サーバー自体を有料で提供
- Agentic Commerce ( AI エージェントによるオンライン購買)

セッションでは、まず社内のナレッジを簡単に検索・参照できる仕組みとして開発しているGoogle OAuth を活用した社内限定 MCP サーバーを紹介しました。 Cloudflare が公開しているサンプルをベースにカスタマイズを行い、 Backlog や esa などの社内リソースを参照できるような仕組みを社内に展開しています。
有料 MCP サーバーの実装
続いて、今後増加するであろう MCP サーバーに Paywall を設定する仕組みについても紹介しました。セッションでは、 Stripe が提供する「MCP payments」を紹介し、MCP サーバーが Stripe Checkout の支払いページ URL を返すことで、有料ツールを簡単に提供する方法についてお話ししました。
ポイントとして、 Cloudflare の MCPAgent と互換性があり、「paidTool」というメソッドで簡単にツールを有料機能化できることや、Stripe Customer との照合に OAuthProvider が必須となること、MCP クライアントの実装によっては正しく申し込み URL を出してくれないこともある現状などを紹介しました。
Agentic Commerce への展望
セッションの最後で、「Agentic Commerce」という新しい概念も紹介しました。これは AI エージェントに買い物をさせる仕組みで、Stripe が 2025 年 5月に開催したカンファレンス「Stripe Sessions 2025」でも注目を集めたトピックです。予算や探している商品の種類などを生成 AI に伝えることで、生成 AI が最適な商品の組み合わせを提案し、場合によっては注文 URL まで発行してくれます。Agentic Commerce を完全自作することは大変ですが、 MCP サーバーとして商品検索機能と注文 URL 発行機能を提供することで、簡単な POC が作成できることを紹介しました。
サンプルコードを公開していますので AI エージェントによる新しいオンライン通販の形に興味がある方は、ぜひご覧ください。
その他の主要セッション
開発者のための Workers に特化したテックトークイベントというコンセプトの通り、その他のセッションも高度かつ実経験に基づいた内容ばかりでした。それぞれのセッションについても簡単にご紹介します。
Cloudflare Realtime と Workers でつくるサーバーレス WebRTC
MIERUNE の @Nekoya3_ さんによるセッションでは、WebRTC 系の事例が紹介されていました。WebRTCの基本技術(STUN、TURN、SFU)について丁寧に解説され、TURNサーバーの公開における不正利用検知の重要性など、実運用での課題と対策が具体的で参考になりました。
また Cloudflare Realtime の活用事例やデモなども紹介されており、リアルタイムコミュニケーション( RTC )系の経験は少ない私でも、やってみたいと感じさせるようなセッションでした。
Workers と Hono で実装した、プロジェクトセカイのゲームアセット配信基盤
Colorful Paletteの髙橋司さんのセッションでは、ゲームアセットを CDN 経由で配信するための Cloudflare 活用事例が紹介されました。ゲームのアセットという公開タイミングやダウンロード制御が細かく求められる要件において、 Cloudflare をどのように活用しているかのお話で、以下のような使い方をお話されていました。
- R2 のメタデータにアセットの公開日時を登録し、Worker で配信可否を判定
- Cache に乗せた後は R2 への確認が不要になる効率的な仕組み
- Terraform → GitHub Actions → Cloudflare という統一されたデプロイフロー
通常のウェブサイトではなかなか使うことのない構成かもしれませんが、それでも Cloudflare Workers のようなエッジ環境を活用することでここまで柔軟な配信設定ができるのかという学びの大きなセッションでした。
MCP in the real world
Cloudflare の Michael Hart さんからは、Cloudflare における MCP に関する開発ストーリーやベストプラクティスなどが紹介されました。Cloudflare 上にデプロイした MCP サーバーを簡単に利用できるようにする mcp-remote の仕組みの解説もあり、MCP 発表の翌日に Cloudflare MCP server の開発を開始したというスピード感ある対応や、MCP をより便利に扱うための取り組み・開発の裏側を知ることができました。

この他にも MCP サーバーを開発・運用する上でのベストプラクティスも紹介されていました。汎用性を持たせることや、 Analytics Engine を使った利用状況のモニタリングなどは、早速自社のツールでも導入を検討したいと考えています。

Vibes Coding などの LT も盛りだくさん
この他にも、スタートアップ向けのプログラムに参加された方の LT やCloudflare の Developer Advocate である Ricky Robinett さんによる AI コーディングツール 3 つを同時実行させた Live Vibes Coding デモなど、様々なコンテンツがありました。どなたも実際に Cloudflare Workers を使い込んでいる方ばかりで、実務的な学びが多い時間だったと感じています。
まとめ
Workers Tech Talks #5 は、Workers エコシステムにおける多様性とイノベーションを示す素晴らしいイベントとなりました。AI と MCP 実装から、リアルタイムアプリケーション、ゲームインフラまで、開発者たちが Cloudflare Workers で可能なことの限界を押し広げている様子が見られました。
デジタルキューブとしても、MCP サーバーのビジネス活用という新たな可能性を示すことができました。今後も WordPress を中心としたオープンソースソフトウェアとクラウドサービスの融合によるモダンな Web アーキテクチャを探究し、お客さまへベストプラクティスを提供し続けてまいります。
次回の Cloudflare Workers Tech Talks は、今年の年末または来年初頭に開催予定とのことです。Cloudflare Workers を活用した最新の技術動向に興味がある方は、ぜひ参加をご検討ください。
参考資料
- Cloudflare Workers Tech Talks in Tokyo #5 イベントページ
- Cloudflare Workers Tech Talks in Tokyo #5に岡本秀高が登壇します – 株式会社デジタルキューブ
- StripeとCloudflareで、MCPサーバーのマネタイズ | ドクセル
- Cloudflare Workers Tech Talks in Tokyo #5 – Yusuke Wada
- Make your apps truly interactive with Cloudflare Realtime and RealtimeKit
- WebRTC live streaming to unlimited viewers, with sub-second latency
- https://posfie.com/@hidetaka_dev/p/kKxXbYe